名古屋大学大学院工学研究科 土木工学専攻

構造・材料工学講座 [構造解析学・鋼構造学]

Laboratory of Structural Analysis and Optimal Design
Department of Civil and Environmental Engineering, Nagoya University

RESEARCH TOPICS

A. マルチマテリアル・トポロジー最適設計/ Multi-material topology optimization

 本研究は性質の異なる複数の材料を用いて、それぞれの材料の強度を制約条件としつつ、構造の軽量化を図るマルチマテリアルトポロジー最適設計法の確立を目指しています。ここでは、「高強度−高密度」(pink)および「低強度−低密度」(black)材料を用いて、それぞれの材料の強度を満足しながら軽量でかつ所与の力学的性能を満足する最適材料配置決定法の研究をしています。

弾塑性トポロジー最適化によるエネルギー吸収性能最大化/Energy absorption capacity design by elastoplastic topology optimization

 本研究は、タンパーなどのエネルギー吸収装置の性能改善を意図して材料の弾塑性挙動を考慮したマルチマテリアルトポロジー最適設計法の研究開発を行っています。具体的には「低強度−高靱性材料」である低降伏点鋼材(yellow)と「高強度−低靭性材料」(blue)の両方を用いて、それらの最適材料配置(トポロジー)を決定できるアルゴリズムを提案しました。以下は、本手法を使って算出したエネルギー吸収性能最大化を可能にする材料配置を示した事例です。さらに、本手法は大変形弾塑性構造問題のマルチマテリアル最適設計への拡張を目指しています。

B. マルチスケール・トポロジー最適化(マテリアルデザイン)/Multi-scale topology optimization(material design)

負のポアソン比を有するメタマテリアルの設計/Meta-material design with negative Poisson’s ratio

 メタマテリアルとは、自然界の物質にはない振る舞いをする人工材料をいいます。本研究では、均質化法(homogenization theory)に基づく有限要素解析を用いて、その代表例である「負のポアソン比」(物体を鉛直方向に圧縮変形させると水平方向内側に変形する挙動)を有する材料微視構造(microstructure)を算出する方法を開発しています。負のポアソン比を有する材料は、引張変形を受けると直径方向に膨らむような線材への応用が期待されています。他にも「負の熱膨張係数」(熱を加えると収縮する、あるいは変形しない挙動)を有する材料の最適設計も手がけています。

弾塑性挙動を考慮したマルチスケールトポロジー最適設計法の開発/Multi-scale topology optimization considering elastoplastic deformation

 本研究は、FRP(Fiber-Reinforced Plastics:繊維強化プラスティクス)などの材料微視組織で生じるミクロな弾塑性挙動を考慮したマルチスケールトポロジー最適設計法の研究を行っています。ここでは、材料体積量を制約条件とし、ミクロ領域では von Mises の等方硬化弾塑性材料モデル、マクロ領域では Hill の異方性弾塑性材料モデルを仮定し、分離型マルチスケール解析の枠組みでマクロ構造のエネルギー吸収性能を最大にする材料微視構造の最適材料配置決定法の開発を行っています。

ミクロ−マクロ同時トポロジー最適化/Micro-macro concurrent topology optimization with kinematical nonlinearity

 本研究では、マクロ構造のエンドコンプライアンス最大化を目的として、材料微視構造とマクロ構造のトポロジーを両方同時に最適化する手法の開発を行っています。ここでは、ミクロ領域は2相のマルチマテリアルで構成されるとした上で、各々を Mooney-Rivlin 超弾性モデル化し、マクロ領域では Kaliske 異方性超弾性則を用いて有限変形挙動を考慮した場合の最適構造・最適材料を示しています。左側は荷重が小さい場合、右側は大きな荷重を作用させた場合の最適結果を表しています。

マルチフェーズフィールド法による金属材料微視組織の最適設計/Optimal design for metallic micro-structure applying a multi-phase field-based multi-scale topology optimization

 近年、金属材料の「かなめ」である結晶構造をある程度制御しながら造形できる技術の開発が進められています。本研究ではそれに先立ち、目的に見合った材料物性を発現する金属微視構造をコンピュータで発見する研究を進めています。以下は、マルチスケール解析の枠組みにマルチフェーズフィールド法を組み込んで最適設計したもので、マクロ構造の(a)剛性を最大にする材料微視構造と(b)熱伝導性能を最大にする材料微視構造をコンピュータで算出した例です。

C. 積層造形を念頭においた多孔質構造のトポロジー最適化/Topology optimization for porous structures assuming Additive Manufacturing

 多孔質構造はその形態によって様々な機能を発現し得る興味深い構造体です。近年では、目的に見合った最適な多孔質構造のかたちを事前に見つけておき、それを積層造形によってそのまま造形する設計製作プロセスに大きな関心が寄せられています。しかし、従来のトポロジー最適化法を用いると理論上太い部材が現れやすく(図a)、多孔質構造が全体に分布するような特殊な形態は得られません。そのため、全体の材料体積制約に加え、新たに局所的な体積制約を課すことで多孔質構造を得やすくする方法(図b)が提案されています。しかし、得られた多孔質構造体は応力集中や部材の座屈が生じやすくなります。本研究ではこれを軽減する方法として、p-norm による応力制約法や座屈荷重を簡易な方法で向上させる多孔質構造の設計手法の開発を行っています。

D. 不確かさを考慮したロバストトポロジー最適化/Robust topology optimization considering uncertainty

 通常のトポロジー最適設計では、「設定した設計条件や境界条件は変化しない」ものと仮定した中で最適な構造を見出します。しかし、実際の構造物は不確かな条件変化にさらされることが多く、それに対してロバストであることが要求されます。そのため本研究では、境界条件である荷重の角度や大きさ、載荷位置が不確かに変化してしまうことを加味したロバストトポロジー最適設計法の研究開発を行っています。また、線形問題のみならず非線形の力学問題へ拡張すると同時に、計算コストが大幅に増加しない手法の開発を目指しています。この研究が発展すれば、自動車などの衝突問題や地震等による不確かな振動問題を扱う設計に役立てられると考えられます。

E. 動的応答制御を目的としたトポロジー最適化法の開発/Topology optimization for controlling dynamic structural behavior

 本研究では、地震や機械振動などによる動的応答を短時間で低減させる方法として、ダンピング性能を最大にするためのトポロジー最適設計法の研究を行っています。以下は、異なる周波数の外力に対する最適構造を算出した簡単な計算例を示しています。これらの力学の基本原理と最適化数学により、材料剛性や密度、減衰性能が異なる材料を用いてマルチマテリアルダンピング機構の開発を行っています。

F. 有限変形理論に基づく不確かな荷重角度条件に対する3次元ロバスト最適設計法の開発/Development of three dimention robust optimal design methodfor uncertain load angle conditions based on finite deformation theory

 本研究は、設計荷重の方向が3次元空間上で不確かに変化してしまう厳しい荷重条件に対して、構造のロバスト性と剛性最大化を可能にするトポロジー最適設計法の開発を目的とします。ここでは、構造の幾何学的非線形特性を考慮するために超弾性材料モデルを適用し、エンドコンプライアンスの期待値と標準偏差の和を目的関数として定式化しました。提案手法である目的関数の2次近似式を導入することで、低い計算コストで高精度の設計感度が得られることを示し、またいくつかの数値計算例をとおして本手法の妥当性を検証しました。

G. 3D-printing FRPの最適設計手法の開発/Optimization for 3D-printing FRP

 近年、積層造形技術の発展に伴い、様々な材料を3Dプリンタによって印刷することができるようになりました。その中でも繊維強化プラスチック(FRP)を造形する技術、3D-printing FRP(3DP-FRP)が注目されています。3DP-FRPは軽量でありながら高い強度、剛性を有しており、様々な分野での活躍が期待されています。さらに、従来のFRP材料では難しかった自由な外形表現や繊維配向が可能です。しかし、その高い自由度故に、設計が難しく現状3DP-FRPの性能を活かすことができていません。そこで、本研究では、3DP-FRPの最適設計を数理的に行う手法の開発に取り組んでいます。

H. 界面不連続性を考慮したオイラー型構造-流体統一解法による衝撃吸収構造の超並列シミュレーション/Massively parallel simulation of shock absorption structure using Eulerian fluid-structure interaction analysis method considering interfacial discontinuity

 高齢者の転倒骨折予防ための、衝撃吸収構造の大変形解析を行います。しかし、大変形を伴う構造と空気との連成現象を解析するためには、既往研究では適用されていない固体と流体の界面における質量密度・速度場の不連続性を考慮する必要があります。そこで本研究では、質量密度および速度場の界面不連続性を有する場においても安定して解析ができるオイラー型構造-流体連成解析手法を提案し、スーパーコンピュータを用いた超並列シミュレーションを通してその妥当性と有効性を検証します。

I. 非定常状態を考慮した温度上昇抑制トポロジー最適化の基礎的検討/The basic study of topology optimization for temperature rise suppression in consideration of unsteady thermal boundary conditions

 近年、電子機器の小型化や高性能化に伴い、熱設計の重要性が増しています。熱設計分野への構造最適化の応用には大きな関心が寄せられています。本研究では、熱供給部の温度を最小にするような構造を求めるためのトポロジー最適化を行いました。その結果、条件によっては工学的に有用ではない構造が得られました。それは、本手法では扱いにくい問題の非凸性を生じたことが原因であり、別の解法を開発する必要があることが明らかになりました。

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